革の受託業務を始めて10年以上が経ちました。
最初は何も知らないまま、ミシンを一台置いてスタートした在宅ワークです。道具の使い方も、何が必要なのかも、すべてが手探りでした。
今回は、そんな私が10年以上使い続けてきた道具の中から「これがなければ仕事にならない」と断言できるものを正直にご紹介します。
革細工に興味がある方、在宅で手に職をつけたい方の参考になれば嬉しいです。
そもそも革の道具選びで大切なこと
革を扱う仕事の道具選びで、私が一番大切にしているのは「初心者でも使いやすいかどうか」です。
プロ仕様の道具は性能が高い反面、扱いに慣れるまでに時間がかかるものも多いです。でも仕事として取り組む以上、早く使いこなせるようにならなければなりません。
使いやすさと性能のバランス。これが道具選びの基本だと、10年かけて学びました。
道具① 工業用ミシン「JUKI SL-300EX 本縫いミシン」
革の仕事をするうえで、最も重要な道具がミシンです。
私が10年以上使い続けているのが、JUKIのSL-300EX本縫いミシンです。
JUKIは工業用ミシンの世界では知らない人がいないほどの老舗メーカーです。その中でもSL-300EXは、職人の現場でも広く使われている信頼性の高い一台です。
・使い始めたころに苦労したこと
正直に言うと、最初はかなり苦労しました。
一番手こずったのは、スピードと糸の調整です。工業用ミシンは家庭用とはまるで別物で、少し力加減を間違えるだけで縫い目がよれたり、糸が絡まったりしてしまいます。
革は布と違って、一度針を通した穴は消えません。失敗が許されない素材だからこそ、スピードのコントロールと糸調子の感覚をつかむまでには、何度も練習が必要でした。
最初の1ヶ月は、まっすぐ縫うことだけを意識して、ひたすら手を動かしていました。
・10年使ってわかったこと
使い始めてから10年以上が経ちますが、このミシンは一度も大きな故障をしていません。
工業用ミシンはそもそも長時間の連続使用を前提に設計されているため、耐久性が家庭用とは段違いです。その中でもSL-300EXは、パワフルさと安定感が両立していて、厚みのある革でも力強く縫い進めてくれます。
在宅で仕事をしていると、納期が重なって長時間作業しなければならない日もあります。そんなときでも、このミシンは安定して動き続けてくれます。壊れない、へたれない。それが10年使い続けている一番の理由です。
革の仕事を始めたいと思っているなら、ミシン選びは絶対に妥協しないでほしいと思います。道具の良し悪しが、そのまま仕事のクオリティに直結するからです。
道具② 菱目打ちと縫い針
ミシンで縫えない細かい部分や、手縫いが必要な箇所に欠かせないのが菱目打ちと縫い針です。
・菱目打ちとは何か
菱目打ちとは、革に縫い穴を開けるための道具です。先端が菱形になっていて、ハンマーで叩いて革に穴を開けていきます。この穴の間隔や深さが、仕上がりの美しさに直結します。
手縫いならではの温かみのある縫い目は、この菱目打ちがあってこそです。
・糸へのこだわり
私の場合、使用する糸は委託先の会社から指定のものが支給されます。これは伝統工芸品としての品質を均一に保つためです。
素材や糸が統一されていることで、仕上がりのクオリティが安定します。在宅ワークでありながら、プロの現場と同じ品質を保てているのは、こうした仕組みのおかげでもあります。
・手縫いの奥深さ
ミシン縫いとは違い、手縫いは一針一針に集中力が必要です。でもその分、仕上がったときの達成感も格別です。
菱目打ちで丁寧に穴を開けて、針を通して、糸を引く。この繰り返しの中に、革職人としての醍醐味があると感じています。
道具にかけた時間が、仕事の質になる
10年間、同じ道具を使い続けてきて思うことがあります。
道具は、使えば使うほど手に馴染んでいきます。ミシンのクセも、菱目打ちの力加減も、最初はわからなかったことが少しずつわかるようになっていきます。
在宅で革の仕事を始めたころ、私は道具の扱いに悩んでいました。でも今では、道具が仕事のパートナーのような存在になっています。
焦らず、丁寧に、道具と向き合う時間を積み重ねること。それが、在宅で長く続けられる仕事をするための、一番の近道だと思っています。
遠回りしながら気づいたことが、今日も革と向き合う力になっています。






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